ひうい譚

「あなたのキスはdurational? それともpunctual?」

「あれは正しくはオン眉じゃないって私はずっと前から言ってる。」

というのは、同じ英語専攻の友人(♀)が今日私に向かって吐いた言葉である。

※今回の記事を書くためには、読者に断片的なバックグラウンド知識を順番に伝えていく必要があるため話が途切れ途切れになることが予想されるがご了承いただきたい※

まずはこの友人がどんな人物なのかということから書かねばなるまい。本記事では偽名としてこの人物の名前をコクーンとする。これは今後もっといい呼び名が出てくれば変更するし、苦情が来ればその場合もまたすぐに変更するため、長続きする呼び名かどうかは分からないが、今回はコクーンで固定する。さて、このコクーンという女は私と同学年で同じゼミに所属する人物であり、実は過去にもこのブログに登場していて、記念すべき1記事目で「第5文型の中では第2文型が好きだ」と答えていたのがこのコクーンである。コクーンは普段、常人として生きているように見えるにも関わらず所々で変人に片足を踏み込んだような物言いをする女性で、それは例えばバスの中から外を眺めて「今のトラックRHて書いてあったな。ランダムハウスの略かな...」というようなことを真顔で言うというようなことである(ちなみにランダムハウスとはランダムハウス英和辞典を出版している出版社の名前だ。)

 

事の始まりは今日の4限。普段この木曜4限というのは空コマで、だいたいはコクーンと一緒に食堂で何か食べるわけでもなく、ただ座ってゼミ用の論文を精読するといったようなことをやっており、今日もその流れでとりあえず食堂へ足を運んだ。我々二人は諸事情あって、英語を「流し読みする」ということができない体になってしまっており、二人して馬鹿正直に辞書を引きながら今日も論文を読んでいた。ずっと読んでるとどうしてもこの妙にseriousな空気を和らげたくなって、適当に談笑が入ることがあるのだが、今日の会話の一つとしてでてきたのは「メロンソーダ」だった。

メロンソーダというのは、ラジオFM802の春のキャンペーンソングの曲名であり、つい昨日にYoutubeにてMVが公開された楽曲である。aikoが作詞作曲したメロンソーダをRadio Darlingsの歌手たちが歌い繋いでいくというもので、私は普段ラジオは聞かないが、Radio Darlingsのメンバーとしてaiko橋本絵莉子(チャットモンチー済)が登場するのでマークしていた。Radio Darlingsのメンバーなどを詳しく知りたい場合は各々で検索してほしい。

本題にもどる。どうやらコクーンもこのメロンソーダを知っていたようで、「聴こう」「今聴こう」ということになり、スマートフォンのスピーカーからメロンソーダをかけ始めたのである。メロンソーダを聴きながら、私は「サビの部分でaikoとえっちゃんが歌い繋ぐところがとにかく良き」という話をし、コクーンはいつも通り適当に聞き流していたのだが、私はaikoとえっちゃんが歌っている動画を見ながら、この二人の素晴らしい前髪を見て、不意に前髪の良さについてしゃべってしまっていた。

また脱線すると、私は好きな女性のタイプとして「前髪がある」をあげたくなるほど前髪が好きで、これについて書こうとするとプラス2000字はかかるので適当に割愛するが、私がなぜTWICEはそれなりに好きなのにBlackpinkは全く気にもかけないことの理由の一つには、曲自体の差もさることながら、前髪率の低さがある、と結論付けても問題ないと思えるほど、私は前髪を注視している。

コクーンはまたいつも通りこの私の前髪談義までも適当に聞き流すのかと思われたが、今回はそうではなかった。そしてでてきた言葉が今回のタイトルである。

「あれは正しくはオン眉じゃないって私はずっと前から言ってる。」

この文中の「あれ」とは、世の中で「オン眉」と呼ばれる前髪のこと全般を指すのだが、どうもこれに疑問を抱いているらしい。オン眉とは「主に、前髪を切りそろえる位置が眉毛より上の辺りという意味で用いられる言い方。(weblio辞書)」であり、それについては私も知っているはずだが、この「眉毛より上」というのがどうやらおかしいらしい。そして彼女が続けて放ったのがこの言葉である。

「あれはアボブ眉だから。」

この言葉には私も脱帽した。アボブ(above)眉。その通りなのである。今一度、英単語「on」の本質的意味を振り返りたい。スタディサプリのCMであの関先生も言っていた。

「onは"上に"じゃ通用しない。スタサプでは"接触"。横にくっついても"on the wall"。下にくっついても"on the ceiling"。くっついてる時にonを使うんだ。」

では、googleで「オン眉」で画像検索を改めてかけてみる。

確かにアボブ眉ばかりである。しっかり眉毛とくっついている前髪は少ない。

なるほどなと思った。発見であると思った。このブログはこのような言葉と言葉の間のの溝のようなものに挟まっている現象を鮮明に映し出す時にこそ一番輝くような気がしてならない。今回もまた言葉の溝にはさまった何かを見つけてしまったな、と思った。

そう、あれはアボブ眉だ。

ちなみにコクーン曰く、above眉は言いにくいのでそのうち音が変化するらしい。aに強勢が置かれてないので取り払われてbove前髪になり、これだといいにくいのでbav前髪になり、それで一度安定する。(要出典)bavはバブみにも絡んでくるらしく、前髪をアボブ眉にすると幼く見えることでバブみが増すということにつながるらしい。(要出典)

これからオン眉がどのような変遷をたどるのか、我々はこれからまだ見ぬ歴史が刻まれる瞬間を見ることになるのだろう。

 

以上で今回の記事は終わりにする。コクーンの説明が入ったりメロンソーダの説明が入ったりいろいろと混雑したが無事書き終えることができた。

友達の女性が「ちょっと昨日前髪切りすぎちゃって...オン眉になっちゃった...」と嘆いているときは、次からこう返そう。「それオン眉ちゃうで、アボブ眉や。」