ひうい譚

「あなたのキスはdurational? それともpunctual?」

印象に残った言葉を消化する 第一回

こんばんは。あけましておめでとう(4か月越し)

無事、部活では最高学年になり、4月から1年間の休学という選択をし、これから部活だなんだと忙しくなるところにコロナショックときて、日本も世界も大混乱という今日この頃。

STAY HOME(おうち時間)を利用して久々にブログ更新をしようと思う、どうもひういです。みなさまごきげんよう。STAY HOME, STAY HEALTHY。

 

 

今回はそこそこの手抜き記事だ。

私はよく本を読む時、細くて薄い付箋を持ち歩いていて、何か「良い」言葉とか表現とか文章とかがあったときに、その文頭に付箋を貼って後で読み返せるようにしている。これを始めたのは実はそれほど昔ではなくて、だいたい大学2年くらいの頃だったので、ほんの2年前くらいの話である。そのため、それより前に読んだ本には付箋が全く貼られておらず、この習慣をつけてから読んだ本にのみ付箋が貼ってある。

この貼られた付箋の文章、つまり、ひうい的に印象に残っている言葉をここで紹介し、記録しておくための記事だ。

何をもって「印象に残った」とするかの基準はかなりあいまいなのでご了承いただきたい。とりあえず分かりやすく言えば、「よい!」「うわ!」「えぐ!」「きびい!」「えも!」「ぴえん!」と思ったものをチョイスしている。

 

前置きもほどほどに、それではいきましょう。

離婚①

 私たちは再々にわたる協議の末、このたび、めでたく、離婚いたしました。

そういう通知を友人知己にばらまいたわけではありません。シャレに離婚をしたつもりもないし、こういう結果を見るにいたるまでには、ともかくかなり長い道程をへてきたわけでして、だから、競馬の当たりはずれや、水洗便所のコックがこわれて水が便所の中に満ち溢れたなどという困惑よりは、もちろん、ずっと大きな問題であります。

(「離婚」色川武大

 

「離婚」の冒頭。1発目からものすごい長文だが、これが良い。この「離婚」は色川武大直木賞受賞作品で、直木賞らしく読みやすく、面白い(直木賞に全く詳しくはないが)。この文章とともにこの「離婚」がスタートするわけだが、この文章だけでもう本の中に引き込まれていってしまう感じがすると思う。「あぁ、とりあえず男女二人が別れることを決意したところからはじまるんだな」というみちしるべ的な役割だけでなく、「この本はこんな文体であなたたちを引き込んでいきますよ!どうでしょうもう引き込まれているでしょう!」という強い吸引力が感じられてよい。栄えある第一回の1本目はこの「離婚」の冒頭に決定。

離婚②

「もちろんその都度、魅力もあるんだが、それも条件つきでね、否定的な要素を凌駕しない。長く暮らしているから肉親愛に似たものか、それもある。身体に慣れ親しんだ余韻か、それもあるな。孤立を反響しあう間柄から単なる孤立に戻ってしまったゆえの淋しさか、それもある。いろんなものがあるが、それらを皆取り払ってしまっても、あとに何かが残るんだ。それが不思議でしょうがない。 

(「離婚」色川武大

 「離婚」の中盤からもう一つ引用。とにかくこの本は「まわりから別れた方がいいと言われ続けているカップルがなぜもこう長い間付き合ったままなのか」がなんとなく感覚的にわかる小説なのでぜひ読んでほしい。この文は「別れたのになぜかひっついてしまう、その理由」について主人公が述べているのだが、とにかく「なにか」があって引き戻されてしまうらしいですよ、みなさん。そういうことだから、あなたのまわりにいる「別れた方がいいと言われ続けているカップル」はまだ付き合っているんですね。もし無人島に本1冊だけ持っていけるとしたら、「離婚」を選ぼうかというくらい良い。何度でも読み返せる。「離婚」を読み終わって、もう一度「離婚」の冒頭にもどってまた読み返せるのだよ。

インストール

まだお酒も飲めない車も乗れない、ついでにセックスも体験していない処女の17歳の心に巣食う、この何物にもなれないという枯れた悟りは何だというのだろう。歌手になりたいわけじゃない作家になりたい訳じゃない、でも中学生の頃には確実に両手に握り締めることができていた私のあらゆる可能性の芽が、気づいたらごそっと減っていて、このまま小さくまとまった人生を送るのかもしれないと思うととどうにも苦しい。もう17歳だと焦る気持ちと、まだ17歳だと安心する気持ちが交差する。

(「インストール」綿矢りさ

 「インストール」は綿矢りさのデビュー作。なんとなく黒いどろっとした空気が全体に流れている作品で、主人公の女子高生がたまたま知り合った小学生男子と、パソコンを用いて風俗嬢のかわりにチャットするバイトで稼ぐという話。このあらすじだけでかなり「おっと、、、」なりそうだが、本編を読んでいてもなかなか「おっと、、、」の連続である。この文章をピックした理由は、「自分が17歳の頃こんなに厳しい文章を頭から生み出すことは絶対無理だっただろうな」という思いがあるからである。綿矢りさの文壇デビューは17歳。女子高生の頃にこの文章を書いているわけだが、自分が17歳だったころは、まだ「ドロー!じゃあこのタイミングでペンデュラム召喚!いけいけ~!!!」とか言ってた時代なので、同じ時期にこんなに厳しく、切れ味キレキレの、しみて痛いような感じの文章は絶対に書けないので。綿矢りさ、17歳、おそるべし。

 

3つしか紹介していないのになぜか文字数がえげつないことになっているので今日はこれくらいにしておく。まだまだストックはあるし、これからストックは増える予定なので、不定期定期にこういう記事を挟んでいきたい。今度は歌の歌詞なんかもいれられるといいかもしれないですね。

 

それではまたノシ