ひうい譚

「あなたのキスはdurational? それともpunctual?」

身近に本物の変態がいた話

人間誰もが「変態」であるかどうかということの真偽はおいておくとして、大学生になると、「変態」とよばれる人間がまわりからいなくなった。「変態」というレッテルを貼られる人々の数が少なくなった、ような気がする、ということである。

 

思えば小学生の頃は、やたらめったらすぐに「変態」というレッテル貼りが行われていたように思う。どういうことかというと、例えば日常的に一人の男子が「おっぱいおっぱい」言っていれば、すぐにその男子は周りの男の子女の子双方から「変態」扱いを受ける、「変態」と呼ばれてしまう、といった状況だったということだ。また、スカートめくりをよくやる男子がいたとしたら、それもまた「変態」であった。つまり、小学生時代はこの「変態」というレッテルを安易に獲得することが可能な時代だったのである。「変態」になるためのハードルが低かった。

さて、時は流れて大学生になると、なるほど状況は小学校の頃から大きく変わっている。まわりに「変態」と呼ばれる人間が、小学生の時ほど目立たない。「お前アホやなぁ」と言われることはあっても、「お前変態やな」とは、あまり言われない。なぜなら、年を経るにつれて「変態」のハードルが著しく上がったからである。小学生の時は「おっぱい」と言ってれば「変態」だったが、大学生が「おっぱい」と言う時、それを「変態」とみなしてもらえるだろうか。おそらく答えはNOである。なぜなら、まわりも相応に「おっぱい」と口に出すからである。小学生の時は日常的に「おっぱい」と言う人数が少なかった上に、「おっぱい」というその言葉の響きだけで「変態」さを感じられていたのである。しかし、大学ではそうはいかない。極端に言うと、まわりの人々はみなそれなりに「おっぱい」と日常的に言っているし、「おっぱい」という単語そのものから感じられていた「変態」さというのは遠い昔に消失してしまっているからである。スカートめくりの例を考えてみると、逆にこちらは口に出すという行為よりもよりアクティブな感じがして、その行為自体の「変態」さは増しているように思うが、これを大学生がやると高い確率で警察のご用になる。大学でスカートめくりが行われないのだから、スカートめくりによる「変態」レッテル貼りは発生しないため、この方法で「変態」になるのは無理ということになる。

まとめると、大学で「変態」というレッテルを獲得するには、「おっぱい」のような例では力不足であり、しかし「スカートめくり」では行き過ぎであるため、その間をゆく、針の穴を通すような度合いの「変態」さが必要なのである。そしてその範囲はとてつもなく狭い。50yd付近からアメリカンフットボールフィールドのHポールをとらえるよりも、果てしなく狭い。

そういえば、大学に入って初めて「お?これは少し変態では?」と疑えるエピソードが一応ある。大学1回生の頃、たまたま友達と話している時、「彼女にするなら看護系の学部に通う女子か、保育系の学部に通う女子か」という話題になったことがあった。ちなみに普通の男子大学生は、日常会話の95%が女の子の話なのでその点は注意しておいてほしい。さて、その時にちょうどぱっくりと票が割れて、(のちにtwitterでもアンケートを取ったのだが)なかなかおもしろい議論になったのだが、その時に一人の友達が言った一言に「変態」みを感じた。その発言は以下のようなもので

「決め難いけど俺は保育やな。なぜなら赤ちゃん語ができる!!!」

これはなかなか良い線いっている。このブログは知的な大学生ひういによって書かれているので、なぜ彼は赤ちゃん語を欲するのか、いつ赤ちゃん語を使ってほしいのかなどという議論はしない。つまりそういうことである。なかなかに良い「変態」さを帯びた発言であった。

しかし、大学生になって、「なるほど、これが本物の変態か」と思ったのは、もう少し後のことである。赤ちゃん語も確かに「変態」っぽくはあったが、力不足感が否めない。しっかりと「変態」認定するには何か足りない部分があるのである。しかし、これから紹介するエピソードには、聞いた瞬間に「あ、こいつは変態なんだな」と思わせるパワーがある。

あれは大学2回生の頃だったと思う。その時は自分と、もう一人の友達の男という二人で話していた。この男というのがなかなかの曲者で、このほかにも様々な狂気エピソードがあるのだが、その話はまた別の機会にとっておく。その時の話題は「背が低い女子か背が高い女子どちらがいいか」である。案の定こんな話しかしていない。さて、ひういの身長は168cmである。従って、「カップルは男の方が背が高い」というステレオタイプ的に考えると、168cmしかない自分が好きな女の子は基本的に背が低い方に分類されるということはお分かりいただけるだろうか。なのでその時私は、「自分の背が168cmしかないので、どちらかというと背が低い女の子の方が好みかもしれない」というようなことを言った。たぶん背が高くてもすごく好みな女の子は現れると思うので、要するにこの発言はテキトー、いい加減なものなのであるがそれに対して彼(175cmくらいあるかもしれない)は「俺も昔は背が低い女の子が好きだったんだけど、最近背が高い女子がいいなと思うようになった」と言った。特に何か深く考えることもなく、私は理由を尋ねた。すると彼は

「背が高いとさ、体の表面積が増えるんだよね。それが良い」

と言ったのである。これは「変態」である。「大学生としての変態」という高いハードルを優に飛び越え、かつ行き過ぎない、正真正銘の「変態」だ。身長差をこれほど「変態」に捉えた人物はいまだかつていない。昔、twitterで、「キスの時の理想の身長差」みたいなイラストなんかがRTされてきた。「年上高身長彼女のいいところ」みたいなイラストもよくあっただろう。しかし、どの場合でも、「高身長な女性のいいところ」に「体の表面積が広いのもポイント☆」とは書かれていない。誰もそんな見方をしないからである。そしてそんな見方をもっている奴がいるのであれば、それは紛れもない「変態」なのである。このブログは知的な大学生ひういによって書かれているので、彼がどのような場面でその「表面積の広さ」を求めるのかなどは、ここでは論じない。つまりそういうことなので。とにかく、この発言はこの男に「変態」のレッテルを貼るのに十分なものだった。おめでとう、そしてありがとう。

大学生は小学生の「おっぱい」レベルの適当な「変態」を連発して、脳のないウェイ系になってはいけない。かといって警察に出頭せねばならなくなるような行き過ぎた「変態」は禁ぜよ。今回登場した彼のように、針の穴を通すような絶妙なコントロールをみせる「変態」こそが、知的な大学生ということなのではないだろうか。